イベント運営ノウハウ

より良いオンラインイベント・勉強会・セミナーの開催ノウハウまとめ

こんにちは!TechCommitというIT学習コミュニティを運営している井上です。
自分もちょくちょく勉強会を開いたりするのですが、最近はコミュニティ内で色々な人に勉強会を開いてもらう機会も増えてきたので、特にオンラインイベントでの開催ノウハウをまとめておこうかと思います。
勉強会や何らかの登壇機会のある方が、より喜んでもらえるイベントに出来る一助になれば幸いです!

目次

良いイベントの基本的な考え方

イベントには様々な種類のものがありますが、基本的には『非日常体験』をしてもらうこと及び『参加前と参加後のアップデート差分』を軸に考えると満足度の高い時間にしていきやすいです。

特にITエンジニアなどのITリテラシーの高い人に発信する場合、開発などに関する単なる“情報”は基本的にドキュメントで十分な場合も多いです。
むしろ同期的に情報を得るというのは効率が悪くなります。

イベントによる非日常体験とは

そこで『非日常体験』を意識してイベントだからこそ提供できる、求められている価値を考えておきましょう。

例えば、

● ここでしか聞けない(またあまりオープンには書けないぶっちゃけトークのような)情報
● 登壇者等とのリアルタイムな質疑や交流が出来る機会
● 普段面倒でやらない内容を時間を共有してやる機会の提供 (例:ハンズオンや個人の目標設定みたいなワークなどとか)

などなど色々あります。

司会進行の仕方は勿論、グループワークなど含めた進め方などにも工夫が出来ます。ただし、オンラインでの交流要素は次のような罠もありますのでご注意ください。

オンラインイベントの交流の罠に注意する

特にオンラインイベントでの登壇は参加者の顔色が伺いづらく、オフラインに比べてペースメイクや間のとり方、ボケの入れ方などが難しいです。

一方的に話すのを嫌って、人を名指しして回答してもらいたい場合もあるかと思いますが、参加者によってはこれを嫌がる人もいます。
勿論、参加者との関係性や、後ほど記載するアイスブレイクの質、その場の振り方などにもよりますが、もしある程度参加を求めるのであれば、事前に準備をしておくと良いでしょう。

例えば、イベント開始前に雑談して、答えてくれそうな人・人間関係を作ることが好きそうなタイプの人を見定めて、答えてもらいやすい関係性を簡単に作っておくとベターです。

また、急に当てるよりは、「この後ちょっと答えてもらいたいのでぜひご協力ください…!」と事前に、『この後あてますよ〜』と告知しておいてあげると参加者も準備出来るのでストレスが下がります。

その他、グループワークなども好き嫌いが別れやすいので、話しやすい空気を作るというのは大前提として、イベント開催告知時にグループワークを行うこと自体を予め断っておくことで雰囲気づくりに努めましょう。
(TechCommit内でイベントを開催頂く場合は司会が別に付くので心配は不要です。)

参加前と参加後のアップデート差分を明確にしておく

アタリマエのことですが、イベントの価値を明確に意識しておくことは重要です。
具体的には「どんな気持ちでどんな人が参加して、どんな気持ちになって、具体的にどんなことを学んで(体験して)、その後どんな風に活かせるのか」という、イベント参加の前後の差分をきちんとイメージしておくということです。

勿論、イベント開催は準備も大変ですが、『参加者の笑顔』や『凄く良かった!という感想』がイメージできないまま開催しても、情報量の薄い勉強会やグダグダな司会進行などになった場合、開催しなかったほうがマシだったというディスブランディングな状態に繋がる恐れもあります。

勉強会を通したアップデートや参加者の笑顔が明確に想像でき、それを非日常感を伴った体験として提供できれば、少なくとも参加者にとって『良いイベント』として映るでしょう。

オンラインイベントの為の環境設定をしておく

オンラインイベントは何のツールを使うのかというのでやり方がかなり変わります。鉄板なものとしてTechCommitでは下記のものをインストールして使用しています。

(1)交流・質疑の為にCommentScreenなどを導入する

SlackやTwitterのハッシュタグでも良いですが、CommentScreenの導入もオススメです。

https://commentscreen.com/

スライドなどの画面共有をしながら話す場合は特に、ニコニコ動画のようにテキストが流れて、主催者も生放送のように(ほぼ遅延なく)コメントを拾いやすいです。
また、コメントだけでなく絵文字での反応も出来るため、「参加している感」のあるオンラインイベントになります。(「皆さん拍手ください!」など司会者の振る舞いに寄っても盛り上がります)

※CommentScreenは2022年11月現在、無料で利用できるのが5名までになってしまいました。もし無料で運営したい場合、SlackやZoomのチャットに書き込むよう案内するのが良いでしょう。

(2)複数人でカバーできるようZoom等の設定をする

https://zoom.us/jp-jp/meetings.html

Zoomルームを利用する場合、代理ホストや共同ホストの機能を利用してPCなどのトラブル時にフォローしてもらえるようにしておきましょう。
代理ホストであれば主催者がトラブルで指定URLで開始できないということも防げます。

また予想以上に人数が増えた場合なども、(Zoomセミナーでない場合は)ブレイクアウトルームと言う機能で複数部屋に分割するなどもできるよう事前に設定して使い方を把握しておくとよいでしょう。
その他にも入室チャイム音の有無や、待機室の有無など、細かい設定が可能ですのでイベントに応じて予め設定をチェックしておきましょう。
Zoomの投票機能などもとても便利で面白いです!

(3)StreamYardなどの配信ツールを導入する

https://streamyard.com/

より“生放送感”を出したい場合や対談形式でのイベントなどをTV番組のように加工したい場合には、StreamYardなどのツールも予め準備しておきましょう。

満足度をあげるための事前準備をしておく

(1)フィードバックを得てから補完しておく

気合を入れて勉強会をやるのであれば、事前にテーマなどをヒアリングする他、スライドを有識者にレビューしてもらったり、ユーザーインタビューのように他の人にフィードバックをもらっておきましょう。

(2)前提条件やレベル感をあらかじめ揃えておく

当たり前ですが参加者のレベルと比べて内容が簡単すぎても難しすぎてもつまらなく感じてしまいます。
特に外部向けのイベントを行う場合は、どの程度の前提知識が求められるのかや、予めやってきて欲しい内容などを記載しておきましょう。
また、少し専門的な内容の場合は、リファレンスや有用な解説記事なども勉強会中に共有できると喜ばれることもあるので、予め用意しておけるものがあればスライドや自分のカンペとして記載しておきましょう。

(3)お土産を用意しておく

例えばハンズオンや企画などの勉強会では “ワークシート” など実際に作ったもの、まとめたものなど持ち帰ることが出来る成果物があると、ただの見聞きする情報だけでなく、実際に活用していく際にも利用しやすく満足度を上げやすい場合もあります。
参加者のITリテラシーや勉強会の種類によりますが、リアルイベントの場合は、学びをまとめる紙として予め配布しておくという方法もあります。

イベント開催直前の準備

(1)Slackなどの通知を切る

スコココッと何気なく業務の情報が漏れてしまっては目も当てられません…。
マルチモニタの場合は通知が映らない方で画面共有するなども対策として実施できます。

(2)無駄に開いているアプリを閉じる

業務に関する情報が画面共有で写ってしまったらひどい目にあいます…。

(3)配布スライドなどがある場合は準備する

勉強会の内容にもよりますが、特に専門用語などは調べながら聞いている人も多いです。
スライドを自分のペースで見たいという要望も多いので、SlideShareなどにアップロードしたり、PDFで配布しておくと良いでしょう。(課題の回答などがある場合、スライドを開始前配布用と分けられるとベターです)

当日のイベント進行でやれるとよいこと

それでは、様々なイベントで共通的に使えるであろう内容で、本編の開始から終了までの流れを見ていきましょう。

(1)開始用のスライドを表示する

少し早く入る方や遅れている方を待っている時間にも配慮して、当日共有するTOPページなどに待ち時間でやってほしいことなどを書いておきましょう。
例えばTwitterのハッシュタグを表示するだけでも、暇つぶしに参加者同士のつぶやきを探したり反応したり出来ます。
特定の自己紹介や事前アンケート・準備が必要なものも掲載をしておけるとスムーズです。

(2)開始前に個人情報の扱いについて断っておく

特にオンラインイベントの内容だと、すぐに動画や画像が撮れるため忘れがちですが、イベントの様子を画像で記録・公開したい場合は、事前に公開範囲を伝えた上で参加者に許可を取り、苦手な方は事前にカメラをOFFにしておいてもらったり名前を変更しておいてもらったりしましょう。
無用なトラブルを避けることだけでなく参加者のその場での安心感にも繋がります。
また、上記のような約束事や了解は、遅れてきた人は”はじめの案内”のみの場合確認を逃す可能性もあるので、(クローズドなコミュニティでない場合は)都度伝えるか、テキストとして見える形で掲載しておくと良いでしょう。(予めイベントの案内に含めておくのも良い)

(3)開始時に司会が先に話してメイン登壇者は後から話す

単純に登壇者が格好良く見えます。
また、特にグループワーク等を行う場合は何かトラブルが合った際などにも、参加者が司会者(運営者)が誰なのか認識していると協力・相談しやすいとうのもあります。

(4)開始後にアイスブレイクを入れる

イベントの趣旨や登壇者の自己紹介のタイミングで緊張を解すための雑談や可能であれば何かネタを仕込みましょう。グループワークや意見をもらいたい参加型のイベントでは実はかなり重要です。
特にオンラインイベントの場合は参加者はどうしても「他人事」になりやすいため、CommentScreenで(出来ればハードルが下がるように面白く案内して)実際に操作して見せてあげると、「臨場感」を高めると同時に「親近感」を得られるのでおすすめです。

(5)心理的安全性を確保した上で参加してもらう

これは司会者・登壇者の性格にもよりますが、司会者が率先して「馬鹿っぽい例の回答をしてから皆に意見や感想を求める」と回答者が恥をかきづらくなり回答しやすくなります。
また、回答を正誤のある内容だけでなく「感想」を求めるなどをして参加してもらうことで、間違えたくない!という気持ちに邪魔されにくいです。
そして参加してくれた人に対しては「ちゃんと感謝を伝える」また「良いと思った点をしっかりと褒める」などのポジティブなフィードバックをして、楽しい気持ちでイベントを”見続けられる”ようにすると良いでしょう。

※このあたりは先にも書きましたが性格などにも寄るので自分の「得意技」を探しておきましょう。

(6)2時間以上なら休憩を挟む

1時間~1時間半くらいまでなら続けても特に支障は出にくいですが、2時間以上の場合流石に(登壇側も参加側も)疲れるので予め休憩時間もスケジューリングしておきましょう。
休憩時間はバッファにも使えますし、イベントの種類によっては休憩時間で雑談や質疑をしても良いので、それを見越して長めに取っておくというのも良いでしょう。

(7)章ごとに立ち止まってやった内容をまとめる

ハンズオンでも講義でも、皆が同じペースで理解できるわけでは有りません。
基本的には参加者の平均より下くらいを意識して、適宜立ち止まって質問がないかなどを確認して、その場で問題を解決していきましょう。
特にオンラインの場合は顔色をうかがいづらく、細かめにフォローしないと早いうちから脱落してしまいやすいです。
また、フォローの仕方も「質問はありませんか?」と聞くだけではなく、きちんとスライドを巻き戻して、この章ではこんなことをやってきましたね〜と見せながら「このへんとかは大丈夫ですか?」と投げかけた方が参加者も『自分が何を(どこを)理解していなかったのかを理解できる』ので質問がしやすいです。

(8)最後のまとめを終えた後に感想を共有してもらう

最後に、特に少人数の場合は出来れば口頭で参加した人に感想を話してもらえるとベターです。
自分だけではなく他の人の学びなどを聞くことで「あ、そういう観点もあるんだ」とか「こんな風に喜んでいる人がいるんだ」というのを知る事ができます。

そして、特にポジティブに評価している人は、自分が満足している内容を口に出す際に言葉にまとめるという行為によって満足していることを自覚しやすいというのがあります。

特にオフラインイベントで使いやすいテクニックですが、オンラインでも(最悪テキストでも)応用できるでしょう。

(9)アンケートのお願いや次回告知はその場でしておく

忙しい人もいるので引き止めるのは微妙ですが、終了宣言の前にアンケートを案内して、その後に次回や別のイベントなどの告知・宣伝があればしましょう。イベントに参加しやすい・しにくいクラスタというのは結構分かれるので、イベント参加しやすい人に別のイベントを案内しておくのは基本です。

アンケートはGoogleFormなどで簡単なものにして、記載している間に宣伝用のスライドなどを写して聞いてもらうというようなくらいにしておくと参加者にもストレスが少ないでしょう。

イベント開催直後にやれるとよいこと

その他、おまけ程度ですが、開催後にやれるとより良いことも記載しておきます。

● 別途希望者を募っての交流会の開催 (Remoなども良いですがお高いのでZoomのブレークアウトルームでも)
● スライドをアップロードしてから通知する(イベント前にした方がいい場合も)
● Zoom等のアーカイブ動画などを公開する場合は上げてから通知をする
● 時間内に拾いきれなかった質疑をSlackやTwitterなどで回答していく
● 特にTwitterのハッシュタグを活用している場合はTogetterやレポートにまとめておく

オンラインの情報は一時的な体験として提供しやすいのは勿論、上手く使えばそのままコンテンツにもなるというメリットも大きいです。

おわりに

オンラインイベントの準備や当日の開催方法など一通り見てきました。
ひとつでも参考になる部分があったのであれば幸いです。

普段『TechCommit』のIT関連勉強会などでも、毎週イベントを開催していますので、「こういうやり方するのもいいよ!」というのがあれば是非教えて下さい!